2026年施行の労務関連改正法(完)

2026年に施行される労務関連法を中心に、事業者として留意すべき点について解説します。

1.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律 2.労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以上前号) 3.労働安全衛生法 4.子供・子育て支援金の創設

3.労働安全衛生法(2025年5月14日、2027年1月1日、4月1日に段階的に施行)

個人事業者等に対する安全衛生対策の推進、職場のメンタルヘルス対策の推進、化学物質による健康障害防止対策等の推進、機械等による労働災害の防止の促進等、高齢者の労働災害防止の推進について改正がされましたが、以下では個人事業者等に対する安全衛生対策の推進について解説します。個人事業者等の業務上災害の防止、ひいては同じ場で働く労働者の災害防止のため、個人事業者(事業を行う者で労働者を使用しないもの)等を労働安全衛生法による保護対象・義務の主体として位置づける見直しが行われました。従って、個人事業者も従業員と同じ立場と考えて法令を遵守する場面が多くなることに留意する必要があります。

(1)注文者の義務

建設業、造船業、製造業の注文者には、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所で行われる場合には、混在作業による労働災害防止のため、作業間の連絡調整等の必要な措置を講じることが義務付けられているところ、この統括管理の対象に個人事業者等を含む作業従事者が追加されました(15条1項)。

仕事を自ら行う事業者であって当該仕事を行う場所を管理するものは、作業従事者(その労働者以外の作業従事者を含む。)が危険性又は有害性のある作業に従事することによって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講ずるものとされました(30条の4第1項)。

その他改正点が多数ありますが割愛します。

(2)個人事業者等の義務

労働者以外の者で労働者と同一の場所において仕事の作業に従事するものは、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならないこととされました(4条)。

労働者と同一の場所において仕事の作業に従事する労働者以外の作業従事者は、事業者が安衛法第20条から第25条まで及び第25条の2第1項の規定に基づき講ずる措置に応じて、厚生省令で定める必要な事項を守らなければならないこととされました(26条、27条1項)。

事業者は、安衛法第42条第1項の機械等について、同項の規格又は安全装置を具備しなければ、労働者に使用させてはならず、 作業従事役員等(事業者(厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する者に限る。)又は個人事業者(これらの者が法人である場合には、その代表者又は役員)である作業従事者をいう。)は、自ら当該機械等を使用して労働者と同一の場所において仕事の作業を行う場合には、当該規格又は安全装置を具備していない当該機械等を使用してはならないこととされました(42条2項、3項)。

個人事業者に係る作業従事役員等は、労働者と同一の場所において 仕事の作業を行う場合には、厚生労働省令で定めるところにより、安衛法第45条第1項の機械等について定期自主検査を行い、及びその結果を記録しておかなければならないとされました(45条2項、3項)。

作業従事役員等は、労働者と同一の場所において危険又は有害な業務に就くときは、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を受けなければならず、当該教育のほか、作業を行う場所における安全衛生の水準の向上を図るため、安全又は衛生のための教育を受けるように努めなければならないこととされました(59条4項、60条の2第2項)。

(3)業務上災害報告制度の整備

作業従事者は、事業場に安衛法又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができ、注文者、機械等貸与者その他作業従事者に係る事業を行う者の契約の相手方は、当該申告を理由として、当該事業を行う者に対し、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならないこととされました(安衛法第97条第1項及び第3項関係)。

厚生労働大臣は、労働災害の防止に資する施策を推進するため、業務に起因して作業従事者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡した災害の発生状況に係る情報その他の必要な事項について調査を行うことができ、当該調査のために必要なときは、事業を行う者及び作業従事者に対し、必要な事項を報告させることができることとされ、当該厚生労働大臣の権限は、都道府県労働局長及び労働基準監督署長に委任することができることとされました(安衛法 第100条の2関係)。

4.子供・子育て支援金の創設(2026年4月1日施行)

少子化対策を目的として、医療保険料に上乗せして徴収し、その財源を子育て関連施策に充てる仕組みが創設されました。こども家庭庁の試算によると、1人あたりの納付額は全制度の平均で250円〜450円ほどとなる見込みですが、加入者の年収や加入保険によっても異なります。給与システムの更新や企業コストの増加に留意する必要があります。