住宅地空き家の民泊運用するには…
住宅地空き家の民泊運用するには…
今回は、実家や別荘など、家主不在住宅の民泊活用を考える方の一助となれば、ということで少しばかりの経験談をお届けします。
ひょんな経緯から温泉権利付住宅を結構都市部に近い住宅地に所有しております。公共料金、ネット維持費に固都税、温泉利用料そして町内会費に至るまで、自宅とは別の家を持つということは維持費もそれなりにかかるのですが、かといって結構自家使用(温泉三昧)している手前もあり、まあ維持費ぐらいは何とかカバーしたい、というのが始まりでした。
この住宅、一種低層住宅専用区域にあるため、旅館や簡易宿泊所申請とは行かないので、住宅地でも開業でき、自家使用も続けられる民泊運用に向けて目下準備を進めており、1年ほどかけて間もなく開業かなというところに来ています。
1制度、法の壁をクリアすること (5)その他
(1)営業日数 (6)スケジュール
(2)運営管理委託 2創業コストと営業利益について
(3)消防法 (1)創業コスト
(4)ゴミ処理 (2)営業利益
1.制度、法の壁をクリアすること
平成30年に観光庁肝入りで施行された民泊新法では、年間180日、空き家の民泊運用が届け出(無料)だけで簡単にできるイメージがあります。ところがどっこい規制大国ニッポン、甘くはありません。不特定多数のお客様を相手にするので、結局は旅館営業で関わる各種規制の壁を乗り越える準備が必要で、クリアしていなければと届け出が受理されず、受理された場合「届け出番号などを記載した標識」の掲示が義務付けられるなど実質申請許可と変わりがないことが解ってきました。
(1)営業日数
まず、営業日数の制限。
住居専用地域では住民とのトラブルを避けるため、大抵の都道府県は条例により土日、祝日のみの営業に制限されています。しかも、民泊新法で180日の基準となる1日の換算が午前0時からのため、土曜夜泊と土日祝日が連続する場合のみ受け入れ可能で、結局営業可能日数は実質年間60日程度になってしまい、これは守らざるを得ません。
(2)運営管理委託
続いて、家主不在型の空き家物件の宿泊者の受入や清掃などの運営管理委託について。
民泊新法では家主不在型の場合、国交省に登録された「住宅宿泊管理事業者」に委託を義務付けられています。専門業者と契約した場合の委託費は宿泊売上の15%ほど、これに加え集客サイトの成約コストが国内サイトの場合でも3%(海外顧客向けサイトは12%ほど)加わるので約2割がこれらの外部委託費に消えることになります。
これを避けるためには家主(オーナー)自身が住宅宿泊事業者登録を受ける方法がありますが、「宅地建物取引業」「マンション管理業」「賃貸住宅管理業」の免許を持っていない個人の場合、住宅管理業勤務経験2年以上か、「宅地建物取引士」「賃貸住宅経営管理士」「管理業務主任者」資格(国交省認定国家資格)の登録資格保有が求められます。
私の場合は比較的資格の取りやすい賃貸住宅管理士を選択、受験講習やテキスト、合格後の実務経験免除研修で計6万円ほどを半年で負担、地方整備局に登録費9万円で申請、審査と登録までにさらに3か月の日数が必要となりました。
委託した住宅宿泊登録業者から、清掃や帳場の業務をオーナー自身が再受託するという裏技があるようですが、これは名義借りの脱法行為ともとられかねないので正攻法で資格取得で臨みました。
(3)消防法
つぎに消防法関係の遵守。
寝室の合計面積が50平米未満の民泊であっても旅館の防火管理に準じた基準が適用されるので、
消防署の点検による「消防法令適合通知書」の提出が民泊登録時必要です。50平米以下である場合は基準緩和がありますが、避難誘導路の掲示、連動型の火災報知器と消火器の設置、(誘導灯設置、)防炎カーテン・敷物、顧客向け周知徹底方法の明示が必要であることが解りました。これらの付加設備の整備に10万円ほどかかりました。
(4)ゴミ処理
続いてごみ処理の厳格化。
民泊施設は廃棄物処理法に定める20種類の廃プラスチックや金属くず等を市町のごみ収集に出してはならず、専門の産業廃棄物業者を利用することが義務付けられています。
事前に引き受けてもらえる産業廃棄物業者に確認を取り、届け出時に回答できるようにしました。
実際に処理する場合は保管場所の標識や、業者との運搬と処分に関する2通りの契約書、産業廃棄物管理票 (マニフェスト)の交付が必要になります。
(5)その他
その他、食事提供する場合の飲食店営業許可は専用厨房の新設が必要なため提供無しとし、浄化槽について大人数利用による容量オーバー懸念が無いよう利用定員を基本5名としました。
また温泉法による毎年の泉質分析報告などの管理は温泉供給会社・管理組合が代表して行っていることを確認し、室内には成分表示と利用案内の掲示を行えばよいことが判りました。
(6)スケジュール
民泊届出先は都道府県生活衛生の管轄で「〇〇県医療保健部食品安全課 生活衛生班」といった部署であり、事前相談でこれら各種規制に抵触しないことの要件確認と指導を受け、必要に応じ別途市町等での相談確認を経て受理までに半年ほどかかるとみてよいでしょう。
2.創業コストと営業利益について
最後に創業コストと営業利益について整理します。
(1)創業コスト
上記のような制度対応のやり方で25万円ほどかかりましたが、お客様を迎えるための最低限の備品準備も必要です。
洋室ツインベッド、和室3名ですが、予備と状況に応じてエキストラの折り畳みベッドを入れることを考え、6名分を揃えます。まず布団・リネン類、和室分のマットレスで12万円、そして鍋フライパンなどの調理用具とテーブルウエアで3万円、そしてバスタオル・フェイスタオル各20枚で5万円、その他来客スリッパや石鹸シャンプーなど開始時の消耗品3万円、と細々足し込むと25万円ほどになります。
今回自力で住宅宿泊管理業登録して、でのコストでは計50万円ほどかかることとなりましたが、管理委託の場合でも30万円から40万円ほどのイニシャルコストは見た方がよさそうです。
最低限は以上ですが、この機に併せて、壁紙張り替え、畳の表替え、55インチの4Kテレビ、ツインベッド、ファン付きシーリングへの交換、光インターネット回線の引き込みなど、気になる点の改善を図りました。なかなか手が付けられなかった住環境の整備にもなりましたが、お客様受け入れのためには物件の状況によりある程度の支出が必要でしょう。
(2)営業利益
勢いでこれまで準備して、さて採算はというとどうなるでしょうか。
まず宿泊料金の設定です。この民泊の差別化要素は、24時間かけ流し温泉付きの一棟貸であり、家族規模人数利用でき、ペット随伴ができることにありますが、周辺にスーパーがなく、飲食店も多くないので、朝食の自炊軽食食材(パン、コーヒー、サラダ材料等)の提供で補おうと考えています。これらのメリット、デメリットを考慮すると、地方都市駅前朝食付きビジネスホテルの家族ツイン2部屋利用と比較し、22,000円/1泊1棟を標準価格考えております。
1泊の平均宿泊人数を3名、初年度稼働率30%、2年目40%、3年目50%と仮定すると年間収入は、それぞれ、396千円、528千円、660千円、安定してくると700千円/年位と計算できます。
方や経費は、1人1泊当たりの直接経費がリネンクリーニング、消耗品、仲介サイトなどを考慮すると4,500円/1日・1人となり、ハウスクリーニングや備品消耗品の交換補充などを考慮すると、
民泊起因分でそれぞれ、初年度304千円、2年目371千円、3年目438千円、安定してくると450千円/年となります。
これから営業利益としては、初年度91千円、2年目156千円、3年目222千円、安定してくると250千円といったところでしょうか。当初3年間の営業利益が470千円と計算できますので、イニシャルコスト回収のためには。ほぼ3年間我慢すれば、4年目からはほぼほぼこの別荘維持費は確保できることとなりそうです。
家主不在型の住宅地空き家を民泊活用する場合は、固定資産税負担が大きくない地方都市であれば
そこそこ維持費分ぐらいは稼げますが、事業として行うにはやはり商業地域や特区の物件でなければ採算がり立たないことがお分かり頂けたと思います。
以上
今回は、実家や別荘など、家主不在住宅の民泊活用を考える方の一助となれば、ということで少しばかりの経験談をお届けします。
ひょんな経緯から温泉権利付住宅を結構都市部に近い住宅地に所有しております。公共料金、ネット維持費に固都税、温泉利用料そして町内会費に至るまで、自宅とは別の家を持つということは維持費もそれなりにかかるのですが、かといって結構自家使用(温泉三昧)している手前もあり、まあ維持費ぐらいは何とかカバーしたい、というのが始まりでした。
この住宅、一種低層住宅専用区域にあるため、旅館や簡易宿泊所申請とは行かないので、住宅地でも開業でき、自家使用も続けられる民泊運用に向けて目下準備を進めており、1年ほどかけて間もなく開業かなというところに来ています。
1制度、法の壁をクリアすること (5)その他
(1)営業日数 (6)スケジュール
(2)運営管理委託 2創業コストと営業利益について
(3)消防法 (1)創業コスト
(4)ゴミ処理 (2)営業利益
1.制度、法の壁をクリアすること
平成30年に観光庁肝入りで施行された民泊新法では、年間180日、空き家の民泊運用が届け出(無料)だけで簡単にできるイメージがあります。ところがどっこい規制大国ニッポン、甘くはありません。不特定多数のお客様を相手にするので、結局は旅館営業で関わる各種規制の壁を乗り越える準備が必要で、クリアしていなければと届け出が受理されず、受理された場合「届け出番号などを記載した標識」の掲示が義務付けられるなど実質申請許可と変わりがないことが解ってきました。
(1)営業日数
まず、営業日数の制限。
住居専用地域では住民とのトラブルを避けるため、大抵の都道府県は条例により土日、祝日のみの営業に制限されています。しかも、民泊新法で180日の基準となる1日の換算が午前0時からのため、土曜夜泊と土日祝日が連続する場合のみ受け入れ可能で、結局営業可能日数は実質年間60日程度になってしまい、これは守らざるを得ません。
(2)運営管理委託
続いて、家主不在型の空き家物件の宿泊者の受入や清掃などの運営管理委託について。
民泊新法では家主不在型の場合、国交省に登録された「住宅宿泊管理事業者」に委託を義務付けられています。専門業者と契約した場合の委託費は宿泊売上の15%ほど、これに加え集客サイトの成約コストが国内サイトの場合でも3%(海外顧客向けサイトは12%ほど)加わるので約2割がこれらの外部委託費に消えることになります。
これを避けるためには家主(オーナー)自身が住宅宿泊事業者登録を受ける方法がありますが、「宅地建物取引業」「マンション管理業」「賃貸住宅管理業」の免許を持っていない個人の場合、住宅管理業勤務経験2年以上か、「宅地建物取引士」「賃貸住宅経営管理士」「管理業務主任者」資格(国交省認定国家資格)の登録資格保有が求められます。
私の場合は比較的資格の取りやすい賃貸住宅管理士を選択、受験講習やテキスト、合格後の実務経験免除研修で計6万円ほどを半年で負担、地方整備局に登録費9万円で申請、審査と登録までにさらに3か月の日数が必要となりました。
委託した住宅宿泊登録業者から、清掃や帳場の業務をオーナー自身が再受託するという裏技があるようですが、これは名義借りの脱法行為ともとられかねないので正攻法で資格取得で臨みました。
(3)消防法
つぎに消防法関係の遵守。
寝室の合計面積が50平米未満の民泊であっても旅館の防火管理に準じた基準が適用されるので、
消防署の点検による「消防法令適合通知書」の提出が民泊登録時必要です。50平米以下である場合は基準緩和がありますが、避難誘導路の掲示、連動型の火災報知器と消火器の設置、(誘導灯設置、)防炎カーテン・敷物、顧客向け周知徹底方法の明示が必要であることが解りました。これらの付加設備の整備に10万円ほどかかりました。
(4)ゴミ処理
続いてごみ処理の厳格化。
民泊施設は廃棄物処理法に定める20種類の廃プラスチックや金属くず等を市町のごみ収集に出してはならず、専門の産業廃棄物業者を利用することが義務付けられています。
事前に引き受けてもらえる産業廃棄物業者に確認を取り、届け出時に回答できるようにしました。
実際に処理する場合は保管場所の標識や、業者との運搬と処分に関する2通りの契約書、産業廃棄物管理票 (マニフェスト)の交付が必要になります。
(5)その他
その他、食事提供する場合の飲食店営業許可は専用厨房の新設が必要なため提供無しとし、浄化槽について大人数利用による容量オーバー懸念が無いよう利用定員を基本5名としました。
また温泉法による毎年の泉質分析報告などの管理は温泉供給会社・管理組合が代表して行っていることを確認し、室内には成分表示と利用案内の掲示を行えばよいことが判りました。
(6)スケジュール
民泊届出先は都道府県生活衛生の管轄で「〇〇県医療保健部食品安全課 生活衛生班」といった部署であり、事前相談でこれら各種規制に抵触しないことの要件確認と指導を受け、必要に応じ別途市町等での相談確認を経て受理までに半年ほどかかるとみてよいでしょう。
2.創業コストと営業利益について
最後に創業コストと営業利益について整理します。
(1)創業コスト
上記のような制度対応のやり方で25万円ほどかかりましたが、お客様を迎えるための最低限の備品準備も必要です。
洋室ツインベッド、和室3名ですが、予備と状況に応じてエキストラの折り畳みベッドを入れることを考え、6名分を揃えます。まず布団・リネン類、和室分のマットレスで12万円、そして鍋フライパンなどの調理用具とテーブルウエアで3万円、そしてバスタオル・フェイスタオル各20枚で5万円、その他来客スリッパや石鹸シャンプーなど開始時の消耗品3万円、と細々足し込むと25万円ほどになります。
今回自力で住宅宿泊管理業登録して、でのコストでは計50万円ほどかかることとなりましたが、管理委託の場合でも30万円から40万円ほどのイニシャルコストは見た方がよさそうです。
最低限は以上ですが、この機に併せて、壁紙張り替え、畳の表替え、55インチの4Kテレビ、ツインベッド、ファン付きシーリングへの交換、光インターネット回線の引き込みなど、気になる点の改善を図りました。なかなか手が付けられなかった住環境の整備にもなりましたが、お客様受け入れのためには物件の状況によりある程度の支出が必要でしょう。
(2)営業利益
勢いでこれまで準備して、さて採算はというとどうなるでしょうか。
まず宿泊料金の設定です。この民泊の差別化要素は、24時間かけ流し温泉付きの一棟貸であり、家族規模人数利用でき、ペット随伴ができることにありますが、周辺にスーパーがなく、飲食店も多くないので、朝食の自炊軽食食材(パン、コーヒー、サラダ材料等)の提供で補おうと考えています。これらのメリット、デメリットを考慮すると、地方都市駅前朝食付きビジネスホテルの家族ツイン2部屋利用と比較し、22,000円/1泊1棟を標準価格考えております。
1泊の平均宿泊人数を3名、初年度稼働率30%、2年目40%、3年目50%と仮定すると年間収入は、それぞれ、396千円、528千円、660千円、安定してくると700千円/年位と計算できます。
方や経費は、1人1泊当たりの直接経費がリネンクリーニング、消耗品、仲介サイトなどを考慮すると4,500円/1日・1人となり、ハウスクリーニングや備品消耗品の交換補充などを考慮すると、
民泊起因分でそれぞれ、初年度304千円、2年目371千円、3年目438千円、安定してくると450千円/年となります。
これから営業利益としては、初年度91千円、2年目156千円、3年目222千円、安定してくると250千円といったところでしょうか。当初3年間の営業利益が470千円と計算できますので、イニシャルコスト回収のためには。ほぼ3年間我慢すれば、4年目からはほぼほぼこの別荘維持費は確保できることとなりそうです。
家主不在型の住宅地空き家を民泊活用する場合は、固定資産税負担が大きくない地方都市であれば
そこそこ維持費分ぐらいは稼げますが、事業として行うにはやはり商業地域や特区の物件でなければ採算がり立たないことがお分かり頂けたと思います。
以上