2025年施行予定の改正法(その5)
2025年に施行される予定の法律をまとめました。対応すべき点がないかご確認ください。
1.重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(セキュリティクリアランス法)2.育児介護休業法改正3.雇用保険法・子供子育て支援法改正4.建設業法改正(以上前号まで)5.流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正6.情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)改正7.高年齢者等の雇用の安定等に関する法律上の雇用継続措置の例外の廃止 |
5.流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正(2024年5月15日から1年以内に施行)
2024年からドライバーの労働時間に関する規制が強化されたことによる物流停滞に対処するための物流業務の効率化及び軽トラック運送業における死亡・重傷事故件数増加(最近6年で倍増)の減少を目的とする改正が行われました。
(1)物流事業者・荷主に対する施策(物資流通効率化法)
・物流事業者(トラック・鉄道・港湾運送・航空運送・倉庫)は、雇用する運転者への負荷の低減に資するように、運転者1人当たり・運送1回ごとの貨物重量の増加を図るため、輸送網の集約・配送の共同化その他の措置を講ずることを努力義務とする(34条、52条)。また、荷主も、運転者1人当たり・運送1回ごとの貨物重量の増加を図るため、物流事業者への協力につながる一定の措置を講ずることを努力義務とする(42条)。更に、連鎖化事業者(フランチャイザー)は、貨物を運送する運転者の荷待ち時間の短縮および運転者1人当たり・1回の運送ごとの貨物重量の増加を図るため、貨物の受渡しを行う日時等について一定の措置を講ずることを努力義務とする(61条)。物流事業者及び荷主において講ずべき物流効率化措置に関しては、主務省令において判断基準を定めるものとする(35条、43条、53条、62条)。
・主務大臣は、物流効率化措置の適確な実施を確保するために必要があると認めるときは、物流事業者または荷主に対して必要な指導・助言をすることができ(36条、44条、54条、63条)、国は、貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送・荷役等の効率化のために必要があると認めるときは、物流効率化措置に関する判断基準となるべき事項について調査を行い、その結果を公表するものとする(71条)。
・主務大臣が指定する一定規模以上の物流事業者および荷主(「特定事業者」)には、物流効率化に関する中長期計画の作成および定期報告等を義務付ける(37条、45条、55条、64条)。
・特定事業者として指定された物流事業者・荷主は、物流効率化措置に関する中長期的な計画を作成し、主務大臣に提出し(38条、46条、56条、65条)、指定を受けた翌年度以降は毎年度、物流効率化措置の実施状況を主務大臣に報告するものとする(39条、48条、57条、67条)。物流効率化措置の実施状況が著しく不十分な特定事業者は、主務大臣による勧告・公表・措置命令の対象とする(40条、49条、58条、68条)。
・特定事業者のうち特定荷主及び特定連鎖化事業者は、その指定を受けた後、速やかに物流効率化のために必要な業務を統括管理する者(=物流統括管理者)を選任するものとする(47条、66条)。物流統括管理者が統括管理すべき業務としては、物流効率化措置に関する中長期的な計画の作成や、物流効率化に取り組むための体制整備などが挙げられる。
(2)トラック事業者間の取引に対する施策(貨物自動車運送事業法)
・運送体制の明確化を図るため、元請事業者が、真荷主から受託した運送業務を下請けに出すときは、原則として一定事項(実運送を行う貨物自動車運送事業者の商号又は名称、実運送を行う貨物の内容および区間、請負階層(=下請けに出した回数)等)を記載した実運送体制管理簿を作成することを義務付ける(24条の5)。
・元請事業者が、真荷主から受託した運送業務を下請けに出すときは、原則としてて一定事項(運送の役務の内容およびその対価、運送の役務以外の役務が提供される場合は、その内容および対価等)を記載した書面を下請事業者に交付することを義務付ける(24条2項)。
・元請事業者が、真荷主から受託した運送業務を下請けに出すときは、下請け発注に関する一定の健全化措置を講ずることを努力義務とする(24条1項)。一定規模以上の下請け発注を行う元請け事業者においては、①健全化措置に関する規程(=運送利用管理規程)、および②健全化措置の実施等を管理する運送利用管理者を定めて国土交通大臣に届け出ることを義務付ける(24条の2、24条の3)。
(3)軽トラック事業者に対する施策(貨物自動車運送事業法)
・軽トラック運送業における死亡・重傷事故を抑制するため、軽トラック事業者(貨物軽自動車運送事業者)は、事業の届出を行った後、速やかに貨物軽自動車安全管理者1人を選任し、国土交通大臣に届け出ることを義務付ける。貨物軽自動車安全管理者を解任した場合も、同様に届出が必要とする(36条の2第1項、第2項)。また軽トラック事業者は、貨物軽自動車安全管理者に定期講習を受けさせる義務を負うものとする(同条3項)。
・上記のほか、軽トラック運送業における死亡・重傷事故の抑制策として、国土交通大臣に対する事故報告を義務付ける(軽トラック事業者に係る事故報告・安全確保命令に関する情報が、国交省ウェブサイトの公表対象として新たに追加される予定)。