カスタマーハラスメント対応(その2)
厚生労働省が令和2年に行った調査によれば、労働者が過去3年間に勤務先で顧客等からの著しい迷惑行為を一度以上経験した者の割合は15.0%であり、パワーハラスメント(31.3%)よりは少ないですが、セクシャルハラスメントよりも高い割合となっています。そこで、本稿では、カスタマーハラスメントへの対応について考えてみたいと思います。
ハラスメントに関する規制一般カスタマーハラスメントの定義及び判断基準(以上前号)カスタマーハラスメントの具体例カスタマーハラスメントへの対応カスタマーハラスメント対策の基本的枠組み 6.カスタマーハラスメント対策のメリット |
3.カスタマーハラスメントの具体例
厚生労働省の調査によれば、以下のような行為が確認されました。
- 時間的拘束
・長時間の拘束、居座り、電話
リピート型
・頻繁に来店し、そのたびにクレームを言う
・度重なる電話
・複数部署にまたがる複数回のクレーム
- 暴言
・大声・暴言で執拗にオペレーターを責める
・店内で大声をあげて秩序を乱す
・大声での恫喝、罵声、暴言の繰り返し
- 対応者の揚げ足取り
・電話対応での揚げ足取り
・自らの要求を繰り返し、通らない場合は言葉尻を捉える
・同じ質問を繰り返し、対応の御簾が出たところを責める
・一方的にこちらの落ち度に対してのクレーム
・当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立て
- 権威型
・優位な立場にいることを利用した暴言、特別扱いの要求
- SNSへの投稿
・インターネット上の投稿(氏名公表)
・会社・社員の信用を失墜させる行為
- 正当な理由のない過度な要求
・言いがかりによる金銭要求
・私物(スマホ、PC等)の故障についての金銭要求
・遅延したことに寄る運賃の値下げ要求
・難癖をつけたキャンセル料の未払い、代金の返金請求
・備品を過度に要求する(歯ブラシ10本)
・入手困難な商品の過剰要求
・制度上対応できないことへの要求
・運行ルートへのクレーム、それに伴う遅延への苦情
・契約内容を超えた過剰な要求
- セクハラ
・特定の従業員へのつきまとい
・従業員へのわいせつ行為や盗撮
- その他
・事務所への不法侵入
・正当な理由のない業務スペースへの立入
4.カスタマーハラスメントへの対応
上記パワハラ指針では、以下の通り述べられています。
事業主は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮として、例えば、⑴及び⑵の取組を行うことが望ましい。また、⑶のような取組を行うことも、その雇用する労働者が被害を受けることを防止する上で有効と考えられる。
⑴ 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等 からの著しい迷惑行為に関する労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ 適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、4(2)イ及びロの例[注:相談への対応のための窓口をあらかじめ定めて労働者に周知すること、相談窓口の担当者が相談に対しその内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること]も参考にしつつ、次の取組を行うことが望ましい。また、併せて、労働者が当該相談をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発することが望ましい。
イ 相談先(上司、職場内の担当者等)をあらかじめ定め、これを労働者に周知すること。
ロ イの相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
⑵ 被害者への配慮のための取組
事業主は、相談者から事実関係を確認し、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為が認められた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための取組を行うことが望ましい。
(被害者への配慮のための取組例)
事案の内容や状況に応じ、被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に一人で対応させない等の取組を行うこと。
⑶ 他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組 ⑴及び⑵の取組のほか、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為からその雇用する労働者が被害を受けることを防止する上では、事業主が、こうした行為への対応に関するマニュアルの作 成や研修の実施等の取組を行うことも有効と考えられる。また、業種・業態等によりその被害の実態や必要な対応も異なると考えられることから、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めることも、被害の防止に当たっては効果的と 考えられる。