重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律の概要(その1)
2024年の通常国会において重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(セキュリティクリアランス法)が成立し、従前の「特定秘密の保護に関する法律」に基づくセキュリティクリアランス制度(政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報にアクセスする必要がある者に対し、その者の信頼性を調査・確認した上でアクセスを認める制度)が更に整備されることになりました。
1.背景及び目的 2.重要経済安保情報の指定 3.重要経済安保情報の保護措置(以上本号) 4.重要経済安保情報の提供 5.重要経済安保情報の取扱者の制限 6.適正評価 7.罰則 |
1.背景及び目的
①背景
国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大している中で、重要経済基盤に関する情報であって我が国の安全保障(外部からの侵略等の脅威に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。)を確保するために特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要です。
②目的
当該情報の保護及び活用に関し、重要経済安保情報の指定、我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者への重要経済安保情報の提供、重要経済安保情報の取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とします。
③特定秘密保護法との関係
特定秘密保護法と比べると、保護対象となる情報の範囲を拡大し、調査機能の一元化によりセキュリティクリアランスを受ける者の利便性を向上することが企図されています。
2.重要経済安保情報の指定
①行政機関の長は、当該行政機関の所掌事務に係る重要経済基盤保護情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを「重要経済安保情報」として指定します。但し、特別防衛秘密(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法1条3項に規定する特別防衛秘密)及び特定秘密(特定秘密の保護に関する法律3条1項に規定する特定秘密)は除きます(3条1項)。
②重要経済基盤保護情報とは、重要経済基盤(我が国の国民生活又は経済活動の基盤となる公共的な役務であってその安定的な提供に支障が生じた場合に我が国及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるものの提供体制並びに国民の生存に必要不可欠な又は広く我が国の国民生活若しくは経済活動が依拠し、若しくは依拠することが見込まれる重要な物資(プログラムを含む。)の供給網)に関する情報であって次に掲げる事項に関するものをいいます(2条3項、4項)。
(1)外部から行われる行為から重要経済基盤を保護するための措置又はこれに関する計画若しくは研究
(2)重要経済基盤の脆弱性、重要経済基盤に関する革新的な技術その他の重要経済基盤に関する重要な情報であって安全保障に関するもの
(3)(1)号の措置に関し収集した外国(本邦の域外にある国又は地域)の政府又は国際機関からの情報
(4)前二号に掲げる情報の収集整理又はその能力
安全に関わる公共サービスの提供体制や重要な物資の供給網に関する上記情報のうち、行政機関の長が指定するものが重要経済安保情報ということになります。
③重要経済安保情報の指定の有効期間は5年以内ですが、最長30年まで延長されます。但し、指定に係る情報を公にしないことが現に我が国及び国民の安全を確保するためにやむを得ないものであることについて、その理由を示して、内閣の承認を得た場合(行政機関が会計検査院であるときを除く。)は、原則として60年まで延長できます(4条)。
3.重要経済安保情報の保護措置
行政機関の長は、重要経済安保情報の取扱いの業務を行うことができることとされる者(11条1項、2項)のうちから、当該行政機関において指定した重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせる職員の範囲を定めることその他の当該重要経済安保情報の保護に関し必要なものとして政令で定める措置を講ずるものとされます(4条1項)。
警察庁長官は、都道府県警察が保有する情報について指定をしたときは、当該都道府県警察に対し当該指定をした旨を通知し、都道府県警察が保有する重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせる職員の範囲その他の当該都道府県警察による当該重要経済安保情報の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について当該都道府県警察に指示するものとされています(4条2項、3項)。