入管法改正2024(完)
技能実習制度・特定技能制度をめぐる問題や不法滞在問題を改善するため、出入国管理及び難民認定法(「入管法」)及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(「技能実習法」)が改正され2024年6月21日に公布されました。
1.背景 2.入管法(以上前号) 3.技能実習法(育成就労法) |
3.技能実習法(育成就労法)
技能実習法の名称は、「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(「育成就労法」)に改められました。
(1)育成就労制度の目的(1条)
育成就労制度の目的は、育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護を図り、もって育成就労産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能(特定技能1号レベルの技能とされています。)を有する人材を育成するとともに、育成就労産業分野における人材を確保することとされています。技能実習制度では禁止されていた「人材確保」を正面から認めたものです。
(2)分野別運用方針(7条の2)
政府の定める基本方針に加え、主務大臣は育成就労産業分野のうちの個別分野における運用方針を定めるものとされました。運用方針には、人材の基準、育成就労外国人の育成、人材の受入見込数、育成就労計画認定の停止・再開の措置、育成就労実施者の変更等を定めることとされています。個別分野毎に受入見込数が策定されることになります。
(3)育成就労計画の認定
育成就労を行わせようとする本邦の個人又は法人は対象外国人毎に育成就労計画を作成して出入国管理庁長官及び厚生労働大臣の認可を受ける必要があります(8条)。
育成就労計画の認定基準として、従事させる業務・要する技能・日本語能力等が基準に適合していること、育成就労期間が3年以内であること、(単独型の場合)育成就労実施者に対する監査体制が基準に適合していること、外国の送付機関を経由した外国人が送付機関に支払った費用額が基準に適合していることが追加されました(9条1項)。技能能力に応じた業務での就労や悪質ブローカーの排除が期待されます。
(4)転籍の柔軟化
技能実習制度では本人意向の転職は原則として認められませんでしたが、育成就労外国人は育成就労実施者変更の希望を申し出ることができ(8条の2)、当該育成就労外国人を新たに育成就労させようとする本邦の個人又は法人は、当該育成就労外国人を対象とする育成就労計画を作成して出入国管理庁長官及び厚生労働大臣の認定を受けることができることになりました(8条の5)。この場合の育成就労計画の認定基準には、上記一般的基準のほか、(i)育成就労期間が通算(原則として)3年以内であること、(ii)要する技能及び育成就労産業分野が従前と同一であること、(iii)(やむを得ない事情がある場合を除き)直前の育成就労実施者が育成就労を行わせていた期間が主務省令で定める期間(1年以上2年以下)を超えており当該育成就労外国人が修得した技能・日本語能力が基準に適合しており育成就労を行わせようとする者が実績・費用負担能力等の基準に適合していることが含まれます(9条の2)。
育成就労の対象でなくなった外国人を新たに育成就労させようとする本邦の個人又は法人についても、当該育成就労外国人を対象とする育成就労計画を作成して出入国管理庁長官及び厚生労働大臣の認定を受けることができることになりました(8条の6)。この場合の育成就労計画の認定基準には、上記一般的基準のほか、(i)育成就労期間が通算(原則として)3年以内であること、(ii)要する技能及び育成就労産業分野が従前と同一であること又はやむを得ない事情があることが含まれます(9条の3)。(ii)の基準は、当該育成就労外国人が出国した事実があり、出国前の育成就労期間の合計が1年を超えず、出国後の育成就労の対象となった事実がない場合において、従前の認定育成就労計画に定められていた技能と同一でない技能を要する業務又は従前の認定育成就労計画に定められていた育成就労産業分野と同一でない育成就労産業分野に属する技能を要する業務に従事することについてやむを得ない事情があるときは適用されません。
(5)関係機関の整備
出入国管理庁長官及び厚生労働大臣は育成就労実施者変更の希望の申出等の受理に係る事務を外国人育成就労機構に行わせることができます(8条の3)。外国人育成就労機構は、育成就労実施者変更の希望を申し出た育成就労外国人の育成就労の継続が可能となるよう、当該育成就労外国人の相談に応じ、必要な情報の提供、助言、職業紹介その他の援助を行うものとされています(8条の4第3項)。
従前の実習監理を行う監理団体は、監理支援を行う監理支援機関に替わりました(5条、23条)。監理支援機関の許可基準として、(監理型)育成就労実施者と密接な関係がなく知識又は経験を有する者に役員の監理支援事業に係る職務の執行の監査を行わせる措置を講じていることが追加されました(25条1項5号)。従前は、役員が団体監理型実習実施者と密接な関係を有するもののみで構成されていなければ、外部監査は必要ではありませんでした。
(6)特定技能制度との関係
育成就労期間(3年)終了後、一定の技能試験及び日本語能力試験に合格した場合は特定技能1号(5年間)への移行が可能であり、更に一定の技能試験及び日本語能力試験に合格した場合は特定技能2号(期間無制限)への移行が可能です。
(7)施行日・経過措置
育成就労制度の施行は2027年を予定されています。
施行日前に入国し施行日時点で技能実習を行っている場合は、施行日後も引き続き技能実習を継続でき、施行日前に技能実習計画の認定を申請している場合は、施行日後に技能実習生として入国できる場合があります。