フリーランス保護法への対応(その2)
フリーランスと事業者間の取引の適正化等を図るため、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律が2024年11月1日から施行されました。中小企業庁によるアンケート調査や都道府県労働局による調査が始まっており、同法への早急な対応が必要となります。
1.対象者 2.業務委託事業者(一般)の義務(以上前号) 3.特定業務委託事業者の義務(その1) 4.特定業務委託事業者の義務(その2) 5.監督 6.まとめ |
3.特定業務委託事業者の義務(その1)
(1)特定業務委託事業者は、フリーランスの給付を受領した日から60日以内(再委託の場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)の報酬支払期日を設定し、支払わなければなりません(4条1項、3項)。報酬支払日が定められていない場合は給付受領日が報酬支払期日とみなされ、上記に違反した報酬支払日が定められている場合は給付受領日から60日を経過した日が報酬支払期日とみなされます(4条2項)。
(2) 特定業務委託事業者は、広告等によりフリーランスの募集に関する情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません(12条)。フリーランスの募集に関する情報には、①業務の内容、②業務に従事する場所、期間又は時間に関する事項、③報酬に関する事項、④契約の解除(期間満了後に更新しない場合を含む。)に関する事項、⑤フリーランスの募集を行う者に関する事項が含まれます。
(3) 特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者(フリーランスである個人又はフリーランスである法人の代表者)に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければなりません(14条)。ハラスメントの定義は以下の通りです。
(a)性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者(法人の代表者である場合は当該法人)に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること(セクハラ)
(b)特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること(マタハラ)
(c)取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること(パワハラ)
必要な措置には、①①ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発、②相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応が含まれます。
4.特定業務委託事業者の義務(その2)
業務委託が一定期間以上の場合は、以下の義務が追加されます。
(1)特定業務委託事業者は、フリーランスとの業務委託(1ヶ月以上の期間行うもの)に関し、以下の(a)ないし(e)の行為をしてはならず、(f)(g)の行為によってフリーランスの利益を不当に害してはならないとされています(5条)。
(a)フリーランスの責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
(b)フリーランスの責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
(c)フリーランスの責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
(d)通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
(e)正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
(f)自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
(g)フリーランスの責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること
(2) 特定業務委託事業者は、フリーランスが育児介護等と両立して業務委託(6ヶ月以上の期間行うもの)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければなりません(13条)。 (3) 特定業務委託事業者は、業務委託(6ヶ月以上の期間行うもの)を中途解除(更新拒絶を含む。)する場合には、原則として、中途解除日等の30日前までにフリーランスに対し予告しなければなりません。特定業務委託事業者は、予告日から中途解除日等までの間にフリーランスが中途解除等の理由の開示を求めた場合は、遅滞なくこれを開示しなければなりません(16条)。