2026年施行の労務関連改正法(その1)

2026年に施行される労務関連法を中心に、事業者として留意すべき点について解説します。

1.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律 2.労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以上本号) 3.労働安全衛生法 4.子供・子育て支援金の創設

1.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(2026年4月1日施行)

この法律は2016年4月1日から2026年3月31日までの時限立法でしたが、法律の期限が10年延長されて2036年3月31日までとなりました。

一般事業主(常時雇用する労働者が301人以上の事業主)は、(a)女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績(*1)及び(b)労働者の職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備に関する実績(*2)を、定期的に公表する義務があります(21条1項)。

(*1) (a)に関する開示項目については、採用した職員に占める女性職員の割合、採用試験の受験者の総数に占める女性の割合、職員に占める女性職員の割合及びその指揮命令の下に労働させる派遣労働者に占める女性労働者の割合、管理的地位にある職員に占める女性職員の割合、各役職段階にある職員に占める女性職員の割合、中途採用の男女別の実績、職員の給与の男女の差異とされています。

(*2) (b)に関する開示項目については、当該年度に在職する職員に対する当該年度に退職した職員の割合の男女の差異、男女別の育児休業取得率及び男女別の育児休業の取得期間の分布状況、男性職員の配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇取得率並びにそれぞれの休暇の合計取得日数の分布状況、職員(非常勤職員及び臨時的に任用された職員を除く。)の勤務時間の状況に関する内部部局等に勤務する職員のうち管理的地位にある職員とそれ以外の職員の双方又は一方の一人当たりの一月当たりの正規の勤務時間を超えて命じられて勤務した時間、職員(非常勤職員及び臨時的に任用された職員を除く。)の勤務時間の状況に関する内部部局等に勤務する職員のうち管理的地位にある職員とそれ以外の職員の双方又は一方の超過勤務を命じることができる上限を超えて命じられて勤務した職員数、管理的地位にある職員以外の職員の勤務時間の状況に関する職員一人当たりの一月当たりの正規の勤務時間を超えて命じられて勤務した時間並びにその指揮命令の下に労働させる派遣労働者一人当たりの一月当たりの時間外労働及び休日労働の合計時間、管理的地位にある職員以外の職員の勤務時間の状況に関する超過勤務を命じることができる上限を超えて命じられて勤務した職員数、職員の年次休暇等の取得日数の状況、職員のまとまりごとの年次休暇等の取得日数の状況とされています。

現行法上は、一般事業主は、「職員の給与の男女の差異」(必須)のほか(a)及び(b)のそれぞれから1項目以上(合計3項目)を公表する義務があり、常時雇用する労働者が300人以下の事業主は、(a)又は(b)のいずれかから1項目以上(合計1項目)を公表する義務があります(但し常時雇用する労働者が100人以下の事業主は努力義務)。

2026年4月1日以降は、一般事業主については、「女性管理職比率」が必須項目として追加され(合計4項目)、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主についても、「職員の給与の男女の差異」(必須)及び「女性管理職比率」(必須)と(a)又は(b)のいずれかから1項目以上を公表する義務があります(合計3項目)。常時雇用する労働者が100人以下の事業主については、変更はありません。

2.労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(2025年6月11日から1年6ヶ月以内に施行)

カスタマーハラスメント対策を事業主の義務とする改正がなされました。

(1)定義

カスタマーハラスメントとは、①職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(「顧客等言動」)により、③当該労働者の就業環境が害されることとされます(33条1項)。

(2)対策義務

事業主は、カスタマーハラスメントが起こらないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置、その他の雇用管理上必要な措置を講じる必要があります(33条1項)。事業者の講ずべき措置の具体的な内容は指針で定められます(33条4項)が、以下の内容が含まれることになっています。

・事業主の方針等の整備・周知

・相談体制の整備・周知

・発生後の迅速且つ適切な対応・抑止のための措置

・これらの措置と併せて講ずべき措置

(3)不利益取扱の禁止

事業主は、労働者がカスタマーハラスメントの相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたこと等を理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることが禁止されます(33条2項)。

(4)他事業主への協力

事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずるカスタマーハラスメント対応措置の実施に関し必要な協力を求められた場合は、これに応じるよう努力する義務があります(33条3項)。

(5)研修

事業主は、顧客等言動に起因する問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずるに協力するよう努めるものとされます(34条1項)。また、事業主(法人の場合はその役員)は、自らも、顧客等言動に起因する問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう努めるものとされます(34条3項)。