2025年施行予定の改正法
2025年に施行される予定の法律をまとめました。対応すべき点がないかご確認ください。
1重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(セキュリティクリアランス法) 2育児介護休業法改正 3雇用保険法・子供子育て支援法改正 4建設業法改正 5流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正(以上前号まで) 6情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)改正 7高年齢者等の雇用の安定等に関する法律上の雇用継続措置の例外の廃止 |
1.重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(セキュリティクリアランス法)(2025年5月16日施行)
従前の「特定秘密の保護に関する法律」に基づくセキュリティクリアランス制度(政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報にアクセスする必要がある者に対し、その者の信頼性を調査・確認した上でアクセスを認める制度)が更に整備されることになりました。
(1)行政機関の長は、当該行政機関の所掌事務に係る重要経済基盤保護情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを「重要経済安保情報」として指定します。但し、特別防衛秘密(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法1条3項に規定する特別防衛秘密)及び特定秘密(特定秘密の保護に関する法律3条1項に規定する特定秘密)は除きます(3条1項)。
重要経済基盤保護情報とは、重要経済基盤(我が国の国民生活又は経済活動の基盤となる公共的な役務であってその安定的な提供に支障が生じた場合に我が国及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるものの提供体制並びに国民の生存に必要不可欠な又は広く我が国の国民生活若しくは経済活動が依拠し、若しくは依拠することが見込まれる重要な物資(プログラムを含む。)の供給網)に関する情報であって次に掲げる事項に関するものをいいます(2条3項、4項)。
(a)外部から行われる行為から重要経済基盤を保護するための措置又はこれに関する計画若しくは研究
(b)重要経済基盤の脆弱性、重要経済基盤に関する革新的な技術その他の重要経済基盤に関する重要な情報であって安全保障に関するもの
(c)(a)の措置に関し収集した外国(本邦の域外にある国又は地域)の政府又は国際機関からの情報
(d)前二号に掲げる情報の収集整理又はその能力
安全に関わる公共サービスの提供体制や重要な物資の供給網に関する上記情報のうち、行政機関の長が指定するものが重要経済安保情報ということになります。
(2)重要経済安保情報を保有する行政機関の長は、重要経済基盤の脆弱性の解消、重要経済基盤の脆弱性及び重要経済基盤に関する革新的な技術に関する調査及び研究の促進、重要経済基盤保護情報を保護するための措置の強化その他の我が国の安全保障の確保に資する活動の促進を図るために「適合事業者」(*)に当該重要経済安保情報を利用させる必要があると認めたときは、当該適合事業者との契約に基づき、当該適合事業者に当該重要経済安保情報を提供することができます(10条1項)。
(*) 「適合事業者」とは、重要経済基盤の脆弱性の解消を図る必要がある事業者又は重要経済基盤の脆弱性の解消に資する活動を行う事業者、重要経済基盤に関する革新的な技術に関する調査若しくは研究を行う事業者又は重要経済基盤に関する革新的な技術に関する調査若しくは研究に資する活動を行う事業者、重要経済基盤保護情報を保有する事業者又は重要経済基盤保護情報の保護に資する活動を行う事業者その他の我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者であって重要経済安保情報の保護のために必要な施設設備を設置していることその他政令で定める基準に適合するものをいいます(10条1項)。
(3)行政機関の長は、その同意を得て適合事業者に行わせる調査又は研究その他の活動により当該適合事業者が保有することが見込まれるものについて指定をした場合は、当該適合事業者との契約に基づき、当該指定に係る情報を、当該適合事業者に重要経済安保情報として保有させることができ、当該適合事業者に対して当該重要経済安保情報の提供を求めることができます(10条2項、5項)。重要経済安保情報の提供を受け又は重要経済安保情報を保有する適合事業者は、行政機関の長との契約に従い、当該重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせる従業者の範囲を定めることその他の当該重要経済安保情報の適切な保護のために必要な措置を講じ、その従業者に当該重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせるものとされます(10条4項)。
(4)重要経済安保情報の取扱いの業務は、原則として、当該業務を行わせる行政機関の長若しくは当該業務を行わせる適合事業者に当該重要経済安保情報を提供し、若しくは保有させる行政機関の長又は当該業務を行わせる警察本部長が直近に実施した「適性評価」において重要経済安保情報の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者(再評価対象者を除く。)(適正評価結果の通知から10年以内の者に限る。)でなければ行ってはならないとされます(11条1項)。特定秘密保護法に基づく適正評価において特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者(再評価対象者等を除く。)(特定秘密保護法上の適正評価結果の通知から5年以内の者に限る。)も重要経済安保情報の取扱いの業務を行うことができます(11条2項)。
(5)適正評価は、以下の事項についての調査に基づいて行います(12条2項)。
・重要経済基盤毀損活動(重要経済基盤に関する公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、重要経済基盤に関して我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるもの並びに重要経済基盤に支障を生じさせるための活動であって、政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人を当該主義主張に従わせ、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で行われるものをいう。)との関係に関する事項(評価対象者の家族(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、父母、子及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子をいう。)及び同居人(家族を除く。)の氏名、生年月日、国籍(過去に有していた国籍を含む。)及び住所を含む。)
・犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
・情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
・薬物の濫用及び影響に関する事項
・精神疾患に関する事項
・飲酒についての節度に関する事項
・信用状態その他の経済的な状況に関する事項
2.育児介護休業法改正(主に2025年4月1日施行)
(1) 子の年齢に応じてフルタイムで残業をしない働き方やフルタイムで柔軟な働き方を希望する割合が高くなっていくこと(女性・正社員) などから、男女とも希望に応じて仕事・キャリア形成と育児を両立できるようにしていく必要があることから、以下の改正がされました。
① 3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を 講じ(※)、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける。また、当該措置の個別の周知・意向確認を義務付ける(23条の3第1項、2項、5項)。 (2025年10月1日施行)
※ 始業時刻等の変更、テレワーク、短時間勤務、新たな休暇(子の監護等休暇、介護休暇、年次有給休暇を除く。原則として一日未満の単位で取得できる。)の付与、その他働きながら子を養育しやすくするための措置のうち事業主が2つを選択
② 所定外労働の制限 (残業免除) の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子 (現行は3歳になるまでの子) を養育する労働者に 拡大する(16条の8第1項)。
③ 子の看護休暇を子の感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式、卒園式の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(現行は小学校就学前)まで拡大するとともに、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する(16条の2第1項、16条の3第2項)。
④ 3歳になるまでの子を養育する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する(24条2項)。
⑤ 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付ける(21条2項、3項)。(2025年10月1日施行)
(2) 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化のため、以下の改正がされました。
① 育児休業の取得状況の公表義務の対象を、常時雇用する労働者数が300人超(現行1,000人超)の事業主に拡大する(22条の2)。
② 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時に、育児休業の取得状況及び労働時間の状況を把握し労働者の職業生活と家庭生活の両立が図られるようにするために改善すべき事情について分析した上でその結果を勘案すること(PDCAサイクルの実施)並びに数値目標を労働者の育児休業等の取得状況及び労働時間の状況に係る数値を用いて定量的に定めることを事業主に義務付ける(常時雇用する従業員が100人以下の場合は努力義務)(同法12条3項)。
③ 次世代育成支援対策推進法の有効期限(現行は令和7年3月31日まで)を令和17年3月31日まで、10年間延長する。(2024年5月31日施行)
(3) 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等のため、以下の改正がされました。
① 労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、介護休業制度、仕事と介護の両立支援制度・措置等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付ける(21条2項)。
② 労働者等への介護休業制度・仕事と介護の両立支援制度等に関する早期の情報提供や、介護休業申出・介護両立支援制度等の利用に係る申出が円滑に行われるようにするための雇用環境の整備(労働者への研修、相談体制の整備等)を事業主に義務付ける(21条3項、22条2項、4項)。
③ 介護休暇について、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する(16条の6第2項)。
④ 家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する(24条4項)。
3.雇用保険法・子供子育て支援法改正(主に2025年4月1日施行)
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等や共働き・共育ての推進等を目的として雇用保険制度の以下の点が改正されました。
(1) 雇用保険の適用対象となる労働者(一般被保険者)は、1週間の所定労働時間が20時間以上で同一事業者に継続して31日以上雇用される見込みがあることが必要であったところ、1週間の所定労働時間が「10時間以上」の労働者が含まれることとする(雇用保険法4条1項、6条1号、2号)。(2028年10月1日施行)
(2) 自己都合退職者が失業給付(基本手当)を受給する場合の給付制限期間(待機期間(7日間)満了の翌日から原則として2ヶ月間)が、退職間又は退職後にハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合には解除されることになります(雇用保険法21条、33条1項)。また、通達により上記給付制限期間が2ヶ月から1ヶ月に短縮されました(2025年4月1日施行)。
(3)教育訓練支援給付金(一定の教育訓練の受講のために支払った費用の一部に関する給付金)の給付率の上限を70%から80%に引き上げる(引き上げの内訳は、専門実践教育訓練を受け且つ賃金が上昇した場合の10%の追加給付及び特定一般教育訓練を受けて資格を取得し且つ就職等した場合の10%の追加給付)。(2024年4月1日施行)
(4) 雇用保険の被保険者(被保険者期間5年以上)が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、離職時の基本手当(失業保険)に相当する額の給付として、賃金の一定割合を支給する「教育訓練休暇給付金」(給付日数は被保険者期間に応じ90日、120日、150日のいずれか)を支給する。(2025年10月1日施行)
(5) 育児休業給付に関する国庫負担割合(本来1/8だが(雇用保険法66条1項4号)暫定措置として1/80(雇用保険法附則14条))を本来の1/82引き上げ、保険料率(雇用保険率のうち雇用保険法の規定による育児休業給付に要する費用に対応する部分の率)を2025年度から現行の0.4%から.5%に引き上げる(但し、実際の料率は保険財政状況に応じて弾力的に調整し、現行料率も維持可能)(国庫負担割合は2024年5月17日施行、保険料率は2025年4月1日施行)
(6) 子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に被保険者とその配偶者の両方が「14日以上」の育児休業を取得する場合には、「最大28日間」休業開始前賃金の13%相当額が「出生後休業支援給付金」として支給する(現行の育児休業給付(67%)と併せて「給付率80%」へ引き上げられることとなるが、給付は非課税であり育休中は一定の要件の下に社会保険料が免除されるため、「給付率80%」は育休前の手取り額と比較しても実質10割相当になる。配偶者が専業主婦(夫)である場合やひとり親家庭の場合などは、配偶者の育児休業の取得がなくても出生後休業支援給付金は支給(給付率の引上げ)される。)。(2025年4月1日施行)
(7) 被保険者が2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合は、「育児時短就業給付」(時短勤務中に支払われた賃金額の10%相当額)(育児時短就業給付)を支給する。(2025年4月1日施行)
(8)その他の改正については、以下の通りです。(2025年4月1日施行)
・雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付(雇用機会が不足する地域における給付日数の延長)、教育訓練支援給付金の暫定措置を2024年度末から2026年度末まで延長する。教育訓練支援給付金の給付率を基本手当日額の「80%」から「60%」に引き下げる(介護休業給付に係る国庫負担割合を1/80とする暫定措置も2年間延長)。
・就業促進手当を廃止する。就業促進定着手当の上限(基本手当支給残日数の40%相当額(再就職手当として支給残日数の70%が支給された場合は30%相当額))を一律に基本手当支給残日数の「20%」相当額に引き下げる。
・雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例の暫定措置(90日~150日→90日~330日)及び地域延長給付付(雇用機会が不足する地域における給付日数の延長)の暫定措置を2024年度末から2026年度末まで延長する。
・60歳に達した日が2025年4月1日以降の場合、高年齢雇用継続給付(60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の一般被保険者に支給される給付)の給付率を引下げる(賃金低下率が64%以下の場合は各月に支払われた賃金額の10%、賃金低下率が64%超75%未満の場合は各月に支払われた賃金額の10%から0%の間で設定される率)(現行は、賃金低下率が61%以下の場合は各月に支払われた賃金額の15%、賃金低下率が61%超75%未満の場合は各月に支払われた賃金額の15%から0%の間で設定される率)。
4.建設業法改正(下記施行済みを除き2025年12月13日までに施行)
建設業の担い手を確保するため、労働者の処遇改善・働き方改革・生産性向上を促すことを目的とする改正が行われました。
(1)労働者の処遇改善(賃金引上げ)
・建設業者は、その労働者が有する知識・技能その他の能力についての公正な評価に基づいて適正な賃金を支払うこと、その他の労働者の適切な処遇を確保するための措置を、効果的に実施するよう努めなければならない(改正建設業法25条の27第2項)。(2024年12月13日施行)
・中央建設業審議会に、建設工事の労務費に関する基準(標準労務費)を作成しその実施を勧告する権限を付与する(34条2項)。(2024年9月1日施行)
・材料費等を請負代金へ十分に転嫁できないことによる労務費の圧迫を防止するため、建設工事を請け負う建設業者が作成する義務(努力義務)を負っている材料費等や施工のために必要な経費の内訳などを記載した「材料費等記載見積書」に記載する材料費等の額は、当該建設工事を施工するために通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回るものであってはならないものとする(20条2項)。また、建設工事の注文者は、材料費等記載見積書の交付を受けた後、その材料費等の額について、当該建設工事を施工するために通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回ることとなるような変更を求めてはならないものとする(同条6項)。この規制に違反して、著しく低い材料費等の見積りを依頼した発注者は、国土交通大臣または都道府県知事による勧告および公表の対象とする(同条7項・8項)。
・原価割れ契約も労務費の圧迫につながるため、建設工事を請け負う建設業者は、自らが保有する低廉な資材を用いることができるなど正当な理由がある場合を除き、建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額の請負契約を締結してはならないものとする(19条の3)。
(2)資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止(2024年12月13日施行)
・請負契約締結前の段階で資材の供給不足や高騰への対策に関して適切な協議を促すため、建設工事を請け負う建設業者は、主要な資材の供給の著しい減少や資材の価格の高騰など、工期または請負代金の額に影響を及ぼす事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、注文者に対して、その旨と状況把握に必要な情報を通知しなければならないものとする(20条の2第2項)。
・上記の工期又は請負代金の額に影響を及ぼす事象に関するリスク情報を注文者に通知した建設業者は、実際に当該事象が発生した場合、注文者に対して工期・工事内容・請負代金の額の変更についての協議を申し出ることができるものとする(20条の2第3項)。協議の申出を受けた注文者は、当該申出が根拠を欠く場合その他正当な理由がある場合を除き、誠実に協議に応ずるよう努めるものとする(同条第4項)。
・公共工事に関しては、工期または請負代金の額に影響を及ぼす事象の発生により、受注者が請負契約の内容の変更について協議を申し出たときは、各省各庁の長等は誠実に当該協議に応じなければならないものとする(改正公共工事適正化促進法13条2項)。
(3)働き方改革と生産性向上(労働時間の適正化・現場管理の効率化)
・建設工事の注文者に加えて、建設工事を請け負う建設業者についても、施工に通常必要と認められる期間に比して、著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないものとする(19条の5第2項)。
・公共性のある施設・工作物や多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な建設工事について原則として義務づけられている専任の主任技術者及び監理技術者の設置について、現場管理の効率化を目的として、ICTの活用などを要件に設置義務を緩和する(26条3項・26条の5)。(2024年12月13日施行)
・公共工事の受注者には、施工体制台帳を作成した上で、原則としてその写しを発注者に提出することが義務付けられている(改正公共工事適正化促進法15条1項・2項、改正建設業法24条の8)ところ、発注者が情報通信技術を利用する方法によって工事現場の施工体制を確認できる措置を講じている場合には、施工体制台帳の提出義務を免除するものとする(改正公共工事適正化促進法15条2項)。(2024年12月13日施行)
・特定建設業者(一定規模以上の建設工事を下請けに出す建設業者)は、建設工事の適正な施工を確保するために必要な情報通信技術の活用に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとする(25条の28第1項)。また、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者(=元請事業者)は、当該建設工事の下請負人が上記の情報通信技術の活用に関する措置を講ずることができるように、下請負人の指導に努めるものとする(同条2項)。(2024年12月13日施行)
5.流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正(2025年4月1日施行)
2024年からドライバーの労働時間に関する規制が強化されたことによる物流停滞に対処するための物流業務の効率化及び軽トラック運送業における死亡・重傷事故件数増加(最近6年で倍増)の減少を目的とする改正が行われました。
(1)物流事業者・荷主に対する施策(物資流通効率化法)
・物流事業者(トラック・鉄道・港湾運送・航空運送・倉庫)は、雇用する運転者への負荷の低減に資するように、運転者1人当たり・運送1回ごとの貨物重量の増加を図るため、輸送網の集約・配送の共同化その他の措置を講ずることを努力義務とする(34条、52条)。また、荷主も、運転者1人当たり・運送1回ごとの貨物重量の増加を図るため、物流事業者への協力につながる一定の措置を講ずることを努力義務とする(42条)。更に、連鎖化事業者(フランチャイザー)は、貨物を運送する運転者の荷待ち時間の短縮および運転者1人当たり・1回の運送ごとの貨物重量の増加を図るため、貨物の受渡しを行う日時等について一定の措置を講ずることを努力義務とする(61条)。物流事業者及び荷主において講ずべき物流効率化措置に関しては、主務省令において判断基準を定めるものとする(35条、43条、53条、62条)。
・主務大臣は、物流効率化措置の適確な実施を確保するために必要があると認めるときは、物流事業者または荷主に対して必要な指導・助言をすることができ(36条、44条、54条、63条)、国は、貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送・荷役等の効率化のために必要があると認めるときは、物流効率化措置に関する判断基準となるべき事項について調査を行い、その結果を公表するものとする(71条)。
・主務大臣が指定する一定規模以上の物流事業者および荷主(「特定事業者」)には、物流効率化に関する中長期計画の作成および定期報告等を義務付ける(37条、45条、55条、64条)。
・特定事業者として指定された物流事業者・荷主は、物流効率化措置に関する中長期的な計画を作成し、主務大臣に提出し(38条、46条、56条、65条)、指定を受けた翌年度以降は毎年度、物流効率化措置の実施状況を主務大臣に報告するものとする(39条、48条、57条、67条)。物流効率化措置の実施状況が著しく不十分な特定事業者は、主務大臣による勧告・公表・措置命令の対象とする(40条、49条、58条、68条)。
・特定事業者のうち特定荷主及び特定連鎖化事業者は、その指定を受けた後、速やかに物流効率化のために必要な業務を統括管理する者(=物流統括管理者)を選任するものとする(47条、66条)。物流統括管理者が統括管理すべき業務としては、物流効率化措置に関する中長期的な計画の作成や、物流効率化に取り組むための体制整備などが挙げられる。
(2)トラック事業者間の取引に対する施策(貨物自動車運送事業法)
・運送体制の明確化を図るため、元請事業者が、真荷主から受託した運送業務を下請けに出すときは、原則として一定事項(実運送を行う貨物自動車運送事業者の商号又は名称、実運送を行う貨物の内容および区間、請負階層(=下請けに出した回数)等)を記載した実運送体制管理簿を作成することを義務付ける(24条の5)。
・元請事業者が、真荷主から受託した運送業務を下請けに出すときは、原則としてて一定事項(運送の役務の内容およびその対価、運送の役務以外の役務が提供される場合は、その内容および対価等)を記載した書面を下請事業者に交付することを義務付ける(24条2項)。
・元請事業者が、真荷主から受託した運送業務を下請けに出すときは、下請け発注に関する一定の健全化措置を講ずることを努力義務とする(24条1項)。一定規模以上の下請け発注を行う元請け事業者においては、①健全化措置に関する規程(=運送利用管理規程)、および②健全化措置の実施等を管理する運送利用管理者を定めて国土交通大臣に届け出ることを義務付ける(24条の2、24条の3)。
(3)軽トラック事業者に対する施策(貨物自動車運送事業法)
・軽トラック運送業における死亡・重傷事故を抑制するため、軽トラック事業者(貨物軽自動車運送事業者)は、事業の届出を行った後、速やかに貨物軽自動車安全管理者1人を選任し、国土交通大臣に届け出ることを義務付ける。貨物軽自動車安全管理者を解任した場合も、同様に届出が必要とする(36条の2第1項、第2項)。また軽トラック事業者は、貨物軽自動車安全管理者に定期講習を受けさせる義務を負うものとする(同条3項)。
・上記のほか、軽トラック運送業における死亡・重傷事故の抑制策として、国土交通大臣に対する事故報告を義務付ける(軽トラック事業者に係る事故報告・安全確保命令に関する情報が、国交省ウェブサイトの公表対象として新たに追加される予定)。
6.情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)改正(2025年4月1日施行)
旧プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律)の名称が変わったほか、誹謗中傷被害を効果的に防止するため、大規模特定電気通信役務提供者(大規模特定電気通信役務を提供する者として総務大臣に指定された事業者)(2条14号・20条1項)(大規模なSNSや匿名掲示板の運営事業者等)に対して、以下の義務が定められました。
① 総務大臣に対する届出(21条1項)
② 被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表(22条1項)
③ 侵害情報に係る調査の実施(23条)
④ 侵害情報調査専門員の選任・届出(24条)
⑤ 送信防止措置の申出者に対する通知(25条1項)
⑥ 送信防止措置の実施に関する基準等の公表(26条)
⑦ 送信防止措置を講じた場合の発信者に対する通知等(27条)
⑧ 送信防止措置の実施状況等の公表(28条)
7.高年齢者等の雇用の安定等に関する法律上の雇用継続措置の例外の廃止(2025年3月31日施行)
定年(65歳未満)の定めをしている場合は、(i)65歳までの定年の引き上げ、(ii)65歳までの継続雇用制度(希望すれば定年後も雇用する制度)の導入又は(iii)定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じる必要があります(9条1項)。2013年3月31日までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、経過措置として対象者の限定が認められていましたが、この経過措置が2025年3月31日をもって廃止されます。
なお、2021年4月1日以降は、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、70歳までの就業機会確保の努力義務があります。即ち、65歳以上70歳未満の定年の定めをしている場合又は70歳未満までの継続雇用制度を導入している場合は、①70歳までの定年の引き上げ、②70歳までの継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止、④創業支援等措置(高年齢者との委託契約、関連する社会貢献事業と高年齢者間の委託契約等)のいずれかの措置を講ずるよう努める必要があります(10条の2)。創業支援等措置は事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(かかる労働組合がない場合は労働者の過半数の代表者)の同意を得る必要があります。