手っ取り早く 露店営業のこころ
最近地域活性化のお手伝いなどで、石焼き芋を販売なぞ行っております。趣味が昂じて
と申しますか、食い意地が張っていてと申しますか、やると皆さんに喜んでもらえるので、とうとうプロの機械や旗、テントなど一式を買い揃えて、門前市や商店街マルシェ等お声がかかる
と喜んで出店しております。
本業ではなくお役立ちの意識なのですが、毎回シルクスゥイートや安納芋、紅はるかなど
人気の高いこだわりの銘柄芋仕入を行い、売価は、損をしない程度のMサイズ1本200円弱、3本500円などと良心価格。あたりに漂う幸せな甘い香りで場を盛り上げ、プロの石焼の味、しかもお値打ちと主催者・お客様に大変喜んでいただけるので、嬉しいやら(商売のやりがいの原点ですね)、加えて、私としてもイベントを楽しむ良い1日となっております。
さて、その石焼き芋、冬場になると「石焼~芋、お芋。お芋お芋~石焼~き芋」と拡声器
を鳴らしての軽トラ販売が風物詩でありましたが、私の住む地域では東北大震災を境にめっ
きり姿を見せなくなりました。東北の農家のおじさんが機材一式を借りて出稼ぎでやって
いたと思われますが、震災避難や復興事業で中部地域まで出稼ぎする必要が無くなったのかもしれません。でも需要は高いようで、最近はスーパーで焼芋の機械が置かれるようになりました。
「焼芋は儲かるでしょう」、と出店するたびに言われます。NHKの朝ゴラでも話題になっておりますが、本当に手っ取り早いのか…今回は、露店営業の創業の話題を少しばかりいたしたく。
大阪では「食うに困ったらたこ焼き屋か回転焼屋、元手5万円ですぐ食い扶持ぐらいは稼げる」というお話が何かの話題や落語に出てくるような。でもたこ焼きのような露店飲食営業、簡易な露店でやるにしても現実的に創業するとなるとそれなりに結構な手間と費用と準備期間がかかるものです。
厄介なのが食品衛生管理。たこ焼きは飲食業なので、食品衛生管理責任者の配置と、飲食営業の許可を保健所から受ける必要があります。食品衛生管理責任者の講習は、所在市町で年2回程度なので急ぐ場合はと同府県内実施市町へ遠征受講となります。受講申込みから受講証、看板一式を手に入れるまであっという間にひと月くらいかかります。手数料は1万円ほどです。
それから露店道具一式を道具屋で揃えて、やっと営業地域の保健所に飲食店営業の許可申請を行います。設備もコンロだけではなく、露天であれば3方向幕があるテント、浄水汚水のポリタンク、クーラーボックス、手指消毒に消火器、ごみ設備等々の設置が求められます。手数料8千円で実際に検査員の前で道具を広げて検査を受け、許可書が出るまでさらに1か月位はかかります。創業費用も、材料仕入を除いてざっと20万円程度はかかる算段です。費用は安いですが検便を検査機関で行って結果通知を用意する必要もあります。店舗営業やキッチンカーでの操業ではさらに時間と費用が掛かりますね。その間食いつなげるかなあ。
やっと開店しても露店営業エリアは検査を受けた保健所管轄内に限られてしまい、隣の県でやりたければ、隣県の保健所での営業許可取得が必要となります。道路で勝手に露店ができる時代でもないので、販売所の事前確保や出店料の事前調整をしておく必要もあります。加えて、毎年の営業許可更新(検便)も必要となります。
これに比べ石焼き芋は農産物(加工食品ではない)という認識で、現状では殆どの県で食品衛生管理責任者の配置と保健所の飲食店営業許可が必要ではなく、営業エリアは全国筒浦々どこでもOKです。だから出稼ぎ対象だったんですね。
また、たこ焼きやみたらしは、単発のイベントにしろ既存朝市や門前露店にしろ他者と競合し、なかなか新規営業場所開拓が難しいのですが、石焼き芋は結構固定的にやっている露店が無く、イベントや朝市などに比較的参入し易い環境にあり、道具さえ買えばすぐ営業できる商売かと思います。サラリーマンを永くやっておりまして退職したらまだこの目で見ていない全国津々浦々を、1日分の宿泊交通量ぐらい稼いでのんびり回る、そんな平成寅さんを夢見ていてたどり着いた案でありました。(まあ、器具の仕入れコストを考えると物販でも良かったのですが))
石焼き芋開業に必要な道具ですが、石焼き芋の業務用釜はLPガス仕様で十数万円、あとは折り畳みターフテントとテーブル、椅子、消火器、のぼり旗で5万円位、計20万円位といったところでしょうか。LPガスコンロは10kg程度の容量をガス販売会社で借ります。(ガス充てんを前提に無料で借りています)むろん器具を運ぶ車をお持ちであることが前提です。
気になる採算ですが、1日営業の場合、生芋5kg×5箱くらいが、焼対応できる量で、M~Lサイズで1箱25本ほどありますので、全体で120本くらいでしょうか。銘柄芋1箱1500円位で仕入れられますので、生芋で7500円、LPガスが2000円/1回、包装用品で1000円、交通費や駐車料金等を含めて1万数千円ほどが1日の営業コストです。1本180円であれば、まあ80本も売れば、1箱以上売れ残っても赤字はありません。これまでの経験でこの価格に3本500円のお徳セットを設ければほぼ全量売り切りの状況です。
仮に1本200円程度の比較的リーズナブルな価格で売切り、干芋などの物販も多少組入れれば、1日2万円程度の粗利となり、月15日程度出店できれば何となく生業にもできそうです。
生芋の場合売れ残っても翌月位までは十分保存がききますし、私の場合は干芋にして、1袋300円位で小売り販売すれば結構飛ぶように売れます。
創業を考えるとき、イニシャルコストと想定ランニングコスト、対応期間を丹念に調べて組み立てていくことは、実現への夢と楽しさがあります。また計画がしっかり組み立てられていると、実際に手掛けるときに準備や行動の一歩一歩の足取りが確認実感でき、夢が具体的になる喜びも大きくなります。そんな具体的なお手伝いをエール・ビジネスコンサルテイングのメンバーはご支援できればと考えております。