ガチャポンの採算

懇意の若手創業経営者が、事業多角化の一環でガチャポン=カプセルトイを活用した販売企画に挑戦すると伺い、自販機同様、無人販売で利益が得られる副業としての魅力がありそうなので、良い機会と事業採算性などを調べてみました。

1.ガチャポン市場 2.ガチャポンの事業形態 (1)ベンダー設置方式 (2)ガチャポン本体購入方式 (3)ガチャポン本体購入+トイ制作方式 3.まとめ

1.ガチャポン市場

 ガチャポンと言えばかつては駄菓子屋の店先で子供が100円までの硬貨で、ちょっとしたキャラクタートイや、プラ模型、消しゴム等出していたイメージでした。最近は大人も楽しめる精密サンプル模型など商品の幅も広がり、昨年来の市場規模が全国で年400億円超と喧伝されるなど隠れたブームのようです。確かに職場の机の上にユニークな企画物フィギィアやミニチュアカー、キャラクターものまで飾られているのも珍しくなくなりました。コップのフチ子さんシリーズや黒い顔の松崎しげるモノなどが話題となったことも思い出され、エキナカや書店、スーパーなどにずらりとガチャポンの機械本体が並んでいるのも普通に見かけるようになりました。

 大人もターゲットとしたカプセルトイは、1回300円~500円と値段も高いのですが、収集癖をくすぐるアイデア企画と精巧さは頭が下がります。サンプル事業者の方曰く、この値段でこのレベルのトイを出せるのはすごいとのこと。海洋堂の昆虫や恐竜は知られたところですが、1/64スケールのミニチュアカーは、収集人気も高く、絶版後何万円にもなるようなものもあるとか。本当かなあと思いつつ、某所で20分くらい見ていたら1回500円、4種類のR32スカイラインGTのガチャポンを50を過ぎたいい大人の方が何人も回していくのを目撃してしまいました。Youtubeなどネットも賑わっていて、欲しいミニチュアの為に20回も回したとか、SNSで絶版物がまだある設置場所情報なんてのも投稿されています。

2.ガチャポンの事業形態

 ガチャポンの事業形態としては、①ベンダー業者に設置場所を提供する方式(飲料自販機と同じ)、②ガチャポン本体を自前で購入して販売する方式、③ガチャポン本体を購入するだけでなく、カプセルトイも自前で作成する方式の3形態が代表的です。

(1)ベンダー設置方式

 ①のベンダー設置方式は、機材設置費用、カプセルトイの補充管理、販売代金の精算をすべて設置業者が行うので、場所提供事業者にとっての費用負担、管理負担が基本的には無いのがメリットです。しかしこの場合、一定数以上の人通り等集客力、概ね10台以上設置できる良好スペース確保など設置業者の査定が厳しく、結局は大規模店舗や駅、空港などに

絞られてしまいます。また、カプセル1個売上げに対する場所提供者の利益は個別契約ですが10%程度~とすると20台以上置いて月間1,000個以上売れてもなかなか5万円/月には届きません。一般のテナント誘致やイベントスペース運用の合間を縫ったスペース運用や、狭間スペース活用の場面が想定されます。

(2)ガチャポン本体購入方式

 ②のガチャポン本体自前購入方式では、通りに面した実店舗空きスペースやイベント会場に数台置いて副収入というパターンです。本体平均1台65,000円ほどですので経費で落とせるのですが、仮に2年で本体が回収できる粗利を採算ラインに置くと、1台で年32,500円、月2,700円程の粗利が必要となります。

ガチャ1回の平均粗利は、堅実に売れそうか企画物で500円ガチャポンが115円、400円ガチャポンで90円、300円ガチャポンで70円、200円ガチャポンで45円ほどで、平均売上の2割強といったところでしょうか。

上下2台連結したガチャポン本体の場合、上段に大人用売れ筋企画300円売を、下段に200円の子供も楽しめるトイを入れる平均的なモデル想定で、上下それぞれ月間24個ほど売れれば2,700円ほどの利益となります。機械本体オーナーの実店舗営業日がガチャポンの営業日ともなるので、1台につき毎日上下各1回以上回してもらえば、採算に寄与してくれることになり、普通に人通りがある立地であれば、ハードルは高くない感触であり、左程投資リスク無くできる商売だと思えます。

地方都市の駅前シャッター街の店舗前に3台のガチャポンを置いて1か月間テストしたところ売上高合計18,000円、粗利合計4,500円ほどの結果で、良いとは言えない立地でしたが3年ほどで本体回収済みそうな結果でした。毎日の本体出し入れの手間がある一方、大きく貢献できる利益規模ではありませんが、副収入位にはなりそうです。300円のお寿司のフィギュアが、夜間の酔客中心に40個近く売れた一方で、子供向けの下段ミニチュアケーキ消しゴムは数個が売れただけ、とマーケットに合った商品選択の経験値を上げていく必要性を感じました。

(3)ガチャポン本体購入+トイ制作方式

③の自社企画製品トイを入れるパターンでは、トイの仕入制作コストを低減できれば事業多角化に役立ちそうで、今回の事業者が主に挑戦したところです。テストでは、製作コスト100円程度の地域スーベニアトイを23円程度の空きカプセルに詰めて、自社販売スペースを持つ店舗や、大規模店舗のイベントなどに1週間単位で移動させて設置販売したところ、制作した300個近くをほぼ1か月で売切りました。設置場所の確保交渉を如何に旨く行うかで1台につき月間4万円~5万の粗利が得られそうであり早速地元名物のミニチュアご紹介グッズ第二弾、第三弾への展開を開始しました。この過程では日頃支援を頂いている店舗に無料設置いただけたなど支えられたことも大きく、設置運用努力が大きく収益を左右することにもなりそうです。 

3.まとめ

 まとめますと、最近もてはやされているガチャポンの設置販売は、個人で行うには地道な商売の類で、大幅に儲かるものではありません。しかしながら夢のある商材や設置方法の企画、工夫を常にあれこれ考えて運営できるので、儲けに拘らずとも楽しみのある商売のひとつではないかと思います。100円硬貨がやたら溜まる難点もありますが…