カーボンゼロⅢ...化石燃料もバイオマス燃料
化石燃料と言われる石炭・石油・天然ガスは、1億年程度以前の生物の死骸から出来ているというのが定説となっています。まさに、生物を原料としているバイオマス燃料そのものです。ですが、なぜ化石燃料(及びそれを原料とするプラスティック)は、地球温暖化対策の最大のターゲットとされているのでしょう。今回は、これついて考えてみます。
ところで、本題に入る前に二酸化炭素(CO₂)を排出している人間(及び動物)は、なぜ地球温暖化対策の対象となっていないか ご存じでしょうか。勿論人道的な側面もベースにあるとは思いますが、人間はCO₂を吸収している食物を摂取して、そのCO₂を排出しているだけだという前提に基づいています。野菜・果実等は、自然薯のように生育に数年かかるものを例外とすれば、ほぼ1年以内にCO₂を吸収して生育・成長したものです。家庭菜園をしている方には、キュウリを1週間収穫に行かなくてとんでもなく大きくしてしまった経験をお持ちの方もいるでしょう。植物にもダイナックな命の営みがあることを感じます。また、肉・魚等も、生育した植物や、それを食した動物・魚等、さらにそれらを食することによりCO2を吸収した動物・魚等などです。したがって、人間はCO₂を吸収した植物類をこの食物連鎖の中で摂取して形作られ、その一部のCO₂を排出していることとなります。この食物連鎖は、植物の成長のように1年以内とは言えませんが、昔と違って寿命が数十年あるマンモスのような動物を食する習慣はあまりないと思いますので、せいぜい数年程度で完結していると考えていいと思います。ただ、今回は触れませんが、人間や動物はメタンガス(CH₄)も排出していますので、その点への配慮は必要でしょう。
ここで改めて地球温暖化について考えてみますと、これは19世紀半ば以降、特にこの100年ぐらいに温室効果ガスの濃度が急速に上昇しており、それが地球の温度上昇をもたらしている大きな要因と考えられるということでしょう。したがって、その対策として温室効果ガスの排出を抑えることで地球の温度上昇を抑制していくことを目指していこうということです。このことを考えますと、CO₂を短期に吸収・排出を繰り返している部分は両方を相殺して考えることが出来ますが、1億年程度以前に吸収しているものを今排出することは現在の温室効果ガス濃度の上昇となってしまいます。したがって、バイオマス燃料という言葉の使い方には問題はありますが、化石燃料をターゲットにするのは当然のことです。ここでは、時間の概念が非常に意味を持っております。ビジネスでも上記とは少し違いますが、タイミング次第で同じことでも成否を分けることがあります。水道水以外の水を購入する習慣がなかった時代に天然水のペットボトルの輸入販売を手掛けながら、早期に撤退した会社もあります。皮肉にもその翌年大手飲料メーカーが参入し、一気に天然水のペットボトルは浸透していきました。また、「アベノマスク」についても発表した時すぐに配布されていれば高い評価を得たと個人的には思っていますが、配布までの時間を要してしまったことから、その間に手作りマスクの浸透、使用期間の延長等の消費者の工夫、中国での需要減少も合いまった供給体制の整備が進行し、配布時点では多くの人には無用の長物となってしまったのは、皆さんも体験されたことです。
少し脇道にそれましたが、次回は戻って化石燃料以外のバイオマス燃料の代表として木材について触れていきます。
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ふるさと納税には、後払いになりがちな税金を収入のある時に支払えるという利点がありますので皆さんも考慮してください。特に、収入が不安定な方、役職定年・再雇用・退職等により翌年から収入の減少が見込まれる方にお勧めです。
では今回は木材(これを原料とする紙にも言えることです)について考えてみます。間伐材・端材・廃材が、燃料とする木材の多くでしょう。因みに、時には皆伐(ある範囲をすべて伐採)を行った樹木も使われるでしょうが、これは今回の話の中では端材と同様です。
まず間伐材ですが、これは森林の成長過程の中で、密集化を防ぐために間引きされていくものですが、これをすることにより森林の活性化(CO₂吸収の維持・拡大も)が図られますし、間引きされる間伐材は比較的樹齢の短いものと考えられます。また、これにより森林の湿度が低下し温室効果がCO₂の20倍程度あるメタン(CH₄)の発生リスクも下げることが出来ます。次に端材ですが、これは樹木から成型された木材を作成する際に発生する成型とならない部分です。したがって、おそらく50年程度に渡ってCO₂を蓄えたものです。最近、環境配慮の面も含め木材で作られる弁当箱として“曲げわっぱ”も注目されていますが、これで有名な秋田産のものは樹齢150年以上の秋田杉を原料としているようですから、その端材も産業革命ごろから延々とCO₂を蓄えたものとなります。最後に(木材由来の)廃材ですが、これは建物等に利用され、それが役目を終えて廃棄する際に発生されるものです。建物として50年程度利用されていたとすると、約100年前から50年前までの50年間CO₂を蓄えその後50年保持していたとも考えられます。したがって、資源の有効利用という側面は考慮に入れず温室効果ガス(CO₂)排出という面だけ見ると、間伐材を除くと過去長きにわたり蓄積したCO₂を現在排出してしまうということとなり、何ら化石燃料と変わらないとも言えます。最近増えている使い捨てのストローをプラステック製から紙製に変えるというのも無意味、もしくは紙製ストローの方が、体積が増加する分だけ温室効果ガス排出の増加に繋がっているとも言えます。
ただ、この二つには決定的な違いがあります。皆さんも気が付いていると思いますが、人知で、CO2を固定化するために化石燃料を再生することは出来ませんが、人の力によって森林を再生しCO₂を吸収し続けさせることが出来るということです。簡単ではありませんがCO₂の吸収力を増加させることさえ出来るかもしれません。ですから、木材については使用するということに留まらず、その出所がキチンと管理されてCO₂の吸収力の維持・増加が図られているかどうか、例え皆伐であってもその後植樹がなされて再生が図られているか等を監視、少なくとも皆で関心を持っていくことが重要です。ビジネスの世界でも、時流に乗ることも重要ですが、たまには立ち止まって本質を考える習慣をつけることを心に留めておいてほしいものです。ところで、バイオマス燃料(木質だけでなく)発電には、別の問題点もあります。バイオである宿命で燃料に窒素(N)が含まれているため、程度はともかくCO₂の約300倍の温室効果がある亜酸化窒素(N₂O)が発生することが避けられないということです。これがために、温室効果ガス排出削減対策としてバイオマス発電停止を検討している企業も出てきています。
今もウクライナ危機により価格高騰対策として化石燃料消費に補助金を出すなどカーボンゼロに対しては逆行する動きも出ており、この課題については未だ他の課題との優先度合・目標・過程とも定まっているとは言えませんが、このことに限らず不透明な社会状況の中で、皆さんとそれを共有して、一緒に取り組んでいく機会を持てれば幸甚と考えておりますので、よろしくお願いいたします。