建設業法改正
建設業の担い手を確保するため、労働者の処遇改善・働き方改革・生産性向上を促すことを目的とする改正が行われました。(2024年6月14日から1年6ヶ月以内に施行)
1労働者の処遇改善(賃金引上げ) 2資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止 3働き方改革と生産性向上(労働時間の適正化・現場管理の効率化) |
1.労働者の処遇改善(賃金引上げ)
(1)建設業者は、その労働者が有する知識・技能その他の能力についての公正な評価に基づいて適正な賃金を支払うこと、その他の労働者の適切な処遇を確保するための措置を、効果的に実施するよう努めなければならないものとされました(改正建設業法25条の27第2項)。
(2)中央建設業審議会に、建設工事の労務費に関する基準(標準労務費)を作成しその実施を勧告する権限が付与されました(34条2項)。
(3)材料費等を請負代金へ十分に転嫁できないことによる労務費の圧迫を防止するため、建設工事を請け負う建設業者が作成する義務(努力義務)を負っている材料費等や施工のために必要な経費の内訳などを記載した「材料費等記載見積書」に記載する材料費等の額は、当該建設工事を施工するために通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回るものであってはならないものとされました(20条2項)。また、建設工事の注文者は、材料費等記載見積書の交付を受けた後、その材料費等の額について、当該建設工事を施工するために通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回ることとなるような変更を求めてはならないものとされました(同条6項)。この規制に違反して、著しく低い材料費等の見積りを依頼した発注者は、国土交通大臣または都道府県知事による勧告および公表の対象となります(同条7項・8項)。
(4)原価割れ契約も労務費の圧迫につながるため、建設工事を請け負う建設業者は、自らが保有する低廉な資材を用いることができるなど正当な理由がある場合を除き、建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額の請負契約を締結してはならないものとされました(19条の3)。
2.資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
(1)請負契約締結前の段階で資材の供給不足や高騰への対策に関して適切な協議を促すため、建設工事を請け負う建設業者は、主要な資材の供給の著しい減少や資材の価格の高騰など、工期または請負代金の額に影響を及ぼす事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、注文者に対して、その旨と状況把握に必要な情報を通知しなければならないものとされました(20条の2第2項)。
(2)上記の工期又はは請負代金の額に影響を及ぼす事象に関するリスク情報を注文者に通知した建設業者は、実際に当該事象が発生した場合、注文者に対して工期・工事内容・請負代金の額の変更についての協議を申し出ることができるものとされました(20条の2第3項)。協議の申出を受けた注文者は、当該申出が根拠を欠く場合その他正当な理由がある場合を除き、誠実に協議に応ずるよう努めなければなりません(同条第4項)。
また公共工事に関しては、工期または請負代金の額に影響を及ぼす事象の発生により、受注者が請負契約の内容の変更について協議を申し出たときは、各省各庁の長等は誠実に当該協議に応じることが義務付けられました(改正公共工事適正化促進法13条2項)。
3.働き方改革と生産性向上(労働時間の適正化・現場管理の効率化)
(1)建設工事の注文者に加えて、建設工事を請け負う建設業者についても、施工に通常必要と認められる期間に比して、著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないものとされました(19条の5第2項)。
(2)公共性のある施設・工作物や多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な建設工事について原則として義務づけられている専任の主任技術者および監理技術者の設置について、現場管理の効率化を目的として、ICTの活用などを要件に設置義務が緩和されました(26条3項・26条の5)。
(3)公共工事の受注者には、施工体制台帳を作成した上で、原則としてその写しを発注者に提出することが義務付けられています(改正公共工事適正化促進法15条1項・2項、改正建設業法24条の8)が、発注者が情報通信技術を利用する方法によって工事現場の施工体制を確認できる措置を講じている場合には、施工体制台帳の提出義務を免除するものとされました(改正公共工事適正化促進法15条2項)。
(4)特定建設業者(一定規模以上の建設工事を下請けに出す建設業者)は、建設工事の適正な施工を確保するために必要な情報通信技術の活用に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとされました(25条の28第1項)。また、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者(=元請事業者)は、当該建設工事の下請負人が上記の情報通信技術の活用に関する措置を講ずることができるように、下請負人の指導に努めるものとされました(同条2項)。