雇用保険法・子供子育て支援法改正(主に2025年4月1日施行)
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等や共働き・共育ての推進等を目的として雇用保険制度の以下の点が改正されました。
1雇用保険の適用拡大 2教育訓練やリ・スキリング支援の充実 3育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保 4その他の雇用保険制度の見直し 5生後休業支援給付の創設 6育児時短就業給付の創設 |
1.雇用保険の適用拡大(2028年10月1日施行)
雇用保険の適用対象となる労働者(一般被保険者)は、1週間の所定労働時間が20時間以上で同一事業者に継続して31日以上雇用される見込みがあることが必要ですが、改正により、1週間の所定労働時間が「10時間以上」の労働者が含まれることになります(雇用保険法4条1項、6条1号、2号)。
2.教育訓練やリ・スキリング支援の充実(一部は2024年10月1日、2025年10月1日施行)
(1)自己都合退職者が失業給付(基本手当)を受給する場合の給付制限期間(待機期間(7日間)満了の翌日から原則として2ヶ月間)が、退職間又は退職後にハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合には解除されることになります(雇用保険法21条、33条1項)。また、通達により上記給付制限期間が2ヶ月から1ヶ月に短縮されました(2025年4月1日施行)。
(2)教育訓練給付金の額は一定の教育訓練の受講のために支払った費用の額の20%以上70%以下の範囲内で定めるとされています(雇用保険法60条の2第4項)。内訳は、専門実践教育訓練(中長期的なキャリア形成に資する専門的かつ実践的な教育訓練講座を対象)を受けた場合の本体給付が50%、同訓練を受け且つ資格取得等をした場合には追加給付が20%とされ、また、特定一般教育訓練(速やかな再就職および早期のキャリア形成に資する教育訓練講座を対象)を受けた場合の本体給付が40%(追加給付はなし)です(雇用保険法施行規則101条の2の7)。今回の改正により、給付率の上限が70%から80%に引き上げられることになりました。10%引き上げの内訳は、専門実践教育訓練を受け且つ賃金が上昇した場合の10%の追加給付及び特定一般教育訓練を受けて資格を取得し且つ就職等した場合の10%の追加給付です(2024年10月1日施行)。
(3)今回の改正では、労働者の主体的な能力開発(リ・スキリング)をより一層支援する観点から、離職者等を含め、労働者が生活費等への不安なく教育訓練に専念できるように、雇用保険の被保険者(被保険者期間5年以上)が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、離職時の基本手当(失業保険)に相当する額の給付として、賃金の一定割合を支給する「教育訓練休暇給付金」(給付日数は被保険者期間に応じ90日、120日、150日のいずれか)が支給されることとなりました(2025年10月1日施行)。
3.育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保(一部は2024年5月17日)
育児休業給付に関する国庫負担割合(本来1/8だが(雇用保険法66条1項4号)暫定措置として1/80(雇用保険法附則14条))を本来の1/82引き上げ、保険料率(雇用保険率のうち雇用保険法の規定による育児休業給付に要する費用に対応する部分の率)を2025年度から現行の0.4%から.5%に引き上げる(但し、実際の料率は保険財政状況に応じて弾力的に調整し、現行料率も維持可能)こととなりました(国庫負担割合は2024年5月17日施行、保険料率は2025年4月1日施行)。
4.その他の雇用保険制度の見直し
現行法では、雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付(雇用機会が不足する地域における給付日数の延長)、教育訓練支援給付金は、2024年度末までの暫定措置とされていますが、今回の改正では、それらの暫定措置がいずれも2年間延長されます。ただし、教育訓練支援給付金の給付率は、基本手当日額の「80%」から「60%」に引き下げられました。介護休業給付に係る国庫負担割合を1/80とする暫定措置も2年間延長されています。
また、現行法では、就業促進手当として、就業手当、再就職手当、および就業促進定着手当が支給されており、就業促進定着手当は、基本手当支給残日数の40%相当額(再就職手当として支給残日数の70%が支給された場合は30%相当額)が上限とされています。今回の改正では、支給実績が極めて少なく、人手不足の状況下においては安定した職業への就職を促進することが求められていることを踏まえ、就業手当は廃止されることになりました。また、人手不足が深刻化する中で賃金低下が見込まれる再就職にインセンティブを図る必要性が乏しい一方で、早期再就職を行った者への支援として一定の役割を果たしていることを踏まえ、就業促進定着手当自体は維持しつつ、その上限は一律に基本手当支給残日数の「20%」相当額に引き下げられました。
5.生後休業支援給付の創設(2025年4月1日施行)
現行法では、育児休業を取得した場合、休業開始から通算180日までは賃金の67%(手取りで8割相当)、180日経過後は50%の育児休業給付(育児休業給付金および出生時育児休業給付金)が支給されるとされています(雇用保険法61条の7第6項)。
今回の改正により、子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に被保険者とその配偶者の両方が「14日以上」の育児休業を取得する場合には、「最大28日間」休業開始前賃金の13%相当額が「出生後休業支援給付金」として支給されることになりました。この結果、現行の育児休業給付(67%)と併せて「給付率80%」へ引き上げられることとなりましたが、給付は非課税であり育休中は一定の要件の下に社会保険料が免除されるため、「給付率80%」は育休前の手取り額と比較しても実質10割相当になります。なお、配偶者が専業主婦(夫)である場合やひとり親家庭の場合などは、配偶者の育児休業の取得がなくても出生後休業支援給付金は支給(給付率の引上げ)されます。
6.育児時短就業給付の創設(2025年4月1日施行)
被保険者が2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合は、「育児時短就業給付」(時短勤務中に支払われた賃金額の10%相当額)が支給されることになりました。